「絵本」と聞くと子どもだけのもののように感じてしまいがちですが、中にはとても深い内容のものもあり、分別のある大人にこそ読んでほしいものがたくさんあります。
忙しい毎日の中、社会のルールに縛られて、子どもの心を忘れてしまった…。今回は、そんな大人が読んでも感動できる素敵な絵本をご紹介したいと思います。小さい頃に読んだことがあった作品でも、改めて読み返してみると、大人だからこそ気づくことのできる新たな発見があるかもしれません。
その1:「100万回生きたねこ」佐野洋子
100万回も生まれ変わったことのある猫。そんな1匹のとらねこが本当に手に入れたかったものとは…。
いろいろと難しく解釈することもできそうなストーリーですが、人それぞれ得るものがある本だと思います。こちらの絵本は小さい頃に読んだこともある方が多いかと思いますが、大人になったいまでも十分に感動できる一冊です。泣ける大人の絵本、ぜひ読んでみてください。
その2:「ワウシュヴィッツ」吉川愛歩
華やかなペット産業の裏側で、殺処分される犬や猫の数は年間30万頭と言われています。
なんだか僕はこわかった。なにかがすこし変だった。僕は心細くなってないてみた。ちいさな声でないてみる。もう一度だっこして、おりこうにするから。おしっこも覚えるし、かんだりしないし、静かにしてるし、みんなともなかよくする。いいこにするから、ぜったいするから。(「BOOK」データベースより)
こちらの文章を読むだけで、なんだか心がギュッと痛くなりませんか?殺処分される犬の気持ちが手に取るように伝わってくる一冊です。動物が好きな方こそ、ぜひ読んでみてください。
その3:「ともだちや」内田麟太郎
友達がほしいのに、友達の作り方がわからない不器用なキツネ。彼はある日、1時間100円で友達になってあげる「ともだちや」をはじめようと思いつきました。
さびしがりやのキツネが、本当の友達を見つけるこちらの物語。「友達はお金では買えない」というのはごくごく当たり前のことのように思えますが、大人になるにつれ、損得勘定を抜きに交友関係を築くのは、どんどんむずかしくなっているのではないでしょうか。忘れていたあの頃の心を思い出したくなる、優しい一冊です。
その4:「だるまちゃんとてんぐちゃん」加古里子
友達のてんぐちゃんの真似をしたがるだるまちゃんが、工夫しながらてんぐちゃんの持ち物と同じようなものを手に入れていきます。
「人の真似ばかりする」というのは一見あまりいいことのようには思えませんが、真似をする中にも自分なりのアイディアを取り入れていけば、世界にたったひとつだけの個性となるのだということを教えてくれる絵本です。真似っ子のだるまちゃんに嫌な顔をせず感心してあげるてんぐちゃんも愛らしいです。
その5:「星の王子さま」サン=テグジュペリ
言わずもがな、大人の絵本の王道とも言える一冊です。すごく深くて、そして大切なことを教えてくれる絵本。読んだことのない方は、ぜひ一度読んでみてください。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」
「どんなおとなたちも、一度は子どもだった。でもそのことを覚えている大人はほとんどいない」
「花が、なぜ、さんざ苦労して、なんの役にもたたないトゲをつくるのか、そのわけを知ろうというのが、だいじなことじゃないっていうのかい?」(本文より)
この本のすごいところは、二度三度、繰り返し読んでいくうちに前回は気づけなかったところに気づくことができるところです。上記に引用した文章も、読むとハッとさせられるようなものばかり。大人になって忘れてしまった大切なことを思い出させてくれる、とっても素敵な一冊です。
大人の絵本を楽しもう!
子供の頃に触れた絵本もとてもよかったですが、大人になってから読む絵本もまた、格別な味わいがあります。大人だからこそ作者の深い意図を読み取ることができたり、子どもの頃の純粋な気持ちを思い出すことができたり…。
「絵本なんて子どものもの」なんて思わず、ぜひもう一度、絵本の世界に手をのばしてみてはいかがでしょうか?
(image by 足成)