生活の知恵があつまる情報サイト

nanapi

Icon businessビジネス・経済

  1.  
  2.  
  3.  
  4. IT企業10社に聞いた、マネジメントを学んだ「良書」とは

IT企業10社に聞いた、マネジメントを学んだ「良書」とは

会社では、従業員それぞれの価値観や経験によって意見の違いが生まれます。部下をマネジメントする立場にある人や、チームをうまく調整することが求められる人にとっては、困った場面も出てくることでしょう。そこで今回は、IT企業にお勤めの皆さんに「組織論・チームマネジメントのおすすめ本を教えてください!」とお願いしてみました。お仕事の目標や、参考にしている良書を教えていただいたので、お悩みの方は思わぬアドバイスが得られるかも。

2015年09月29日作成

 views

たくさんの人が集まって成り立っている会社。「社員」という前提は同じでも、生まれ育った環境や考え方によってさまざまな違いが出てきます。うまくまとめるには、もめごとが起きたときには、どうしたらいいのでしょうか?メンバーのモチベーションを高め維持するには、どんな方法をとればよいのでしょうか?悩みは尽きませんね。

今回は、IT企業にお勤めの皆さんに「組織論・チームマネジメントのおすすめ本を1~3冊教えてください!」とお願いしてみました。さらに、お仕事への価値観や、目指すチームの姿などもお話ししていただきました。

「組織」「チーム」に悩んでいる方、思わぬ突破口を見つけられるかもしれませんよ。

ご回答いただいた企業はこちら

  • 1 株式会社クックパッド
  • 2 株式会社クラウドワークス
  • 3 グリー株式会社
  • 4 GMOインターネット株式会社
  • 5 GMOペパボ株式会社
  • 6 Tokyo Otaku Mode Inc.
  • 7 株式会社はてな
  • 8 ピクスタ株式会社
  • 9 株式会社ミクシィ
  • 10 株式会社リブセンス
この記事では、各企業を50音順に紹介しています。

目次

クックパッド株式会社 小川 伸一郎さん

小川 伸一郎さん(以下、小川さん)は大学院で物理の博士号を取得後、Web系企業に就職。以後Webサービスの開発に携わりながらRubyコミュニティに関わり続けています。クックパッド入社後はマネージャー職に就き、人事部と技術部長を兼任。現在はエンジニアの採用・評価などにも注力していらっしゃる、小川さんのおすすめ本とは?

1:「How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント」

著者 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル 序文:ラリー・ペイジ 訳:土方奈美
出版社 日本経済新聞出版社
小川さん「有名どころとしては『How Google Works』でしょう。世界で有数のIT系企業であるGoogleという組織がどのようにして成り立っているのか、Googleの元CEOであるエリック・シュミットが当時を振り返りながら語っています。ここで印象に残っているのは『スマートクリエイティブ』です。クックパッドでサービス開発を目指す人たちが備えるべき資質がここに凝縮されているのではと思えるくらい、私の心に刺さりました」

2:「チームが機能するとはどういうことか 『学習力』と『実行力』を高める実践アプローチ」

著者 エイミー・C・エドモンドソン 訳:野津智子
出版社 英治出版
小川さん「こちらは主に『チーミング』について書かれている書籍です。組織が学習し変わり続ける世界で、成功をおさめるためにはどのように行動すべきか。チームとして率直に意見が言い合える、そして共に協働しながら通じあっていくためにはどうすればいいのか。そのヒントとなる考えがまとまっています」

スマートクリエイティブ、そしてチーミングのエッセンスを活かす

なんとも興味深い2冊をおすすめしていただきました。小川さんはこれらの本から得たことを、どのようにお仕事に活かしているのですか?

小川さん「クックパッドではエンジニアの採用と評価を見ているので、特に『スマートクリエイティブ』の考え方はかなり共感を得ましたし、学びも大きかったです。
  
『チーミング』に関しても、組織として成長していくためにどのように学習していくか、またそれを奨励し継続していくかについては、これからやらなければいけないことが多いなという感想です。役に立っているかどうかで言えば、まだまだこれからですが、考え方の方向性には大きな影響を与えてくれたので大きく印象に残っています」

1冊の本がその後の考えや意識に大きく影響して、生活まで変えてしまうことってありますよね。最後に、小川さんがふだんリーダーとして動くときに、心がけていることは何かを聞いてみました。

小川さん「まずは組織やチームに対して真摯であることを心がけています。互いを尊重し、よりよい議論をして質の高いプロダクトを作り上げるには、まずはその雰囲気を醸成する必要があると感じているからです。『チーミング』では、言いたいことを言いあえる関係性を作り上げるのが重要なので、ここはかなり注意しています。
  
あとはチームメンバーの裁量をなるべく大きくしていきたいと思っていることでしょうか。エンジニアもディレクターもそれぞれが『スマートクリエイティブ』になれるよう、雰囲気や環境を整備することも重視しています。とはいえ、このあたりはまだまだ難しいことも多いので、これから作り上げていきたいところですね」

株式会社クラウドワークス 安西剛さん

日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営する株式会社クラウドワークス。その人事部で、ゼネラル・マネージャーをつとめられている安西剛さん(以下、安西さん)はどのような本を読んでいらっしゃるのでしょうか。

1:「チームが機能するとはどういうことか 『学習力』と『実行力』を高める実践アプローチ」

著者 エイミー・C・エドモンドソン 訳:野津智子
出版社 英治出版
安西さん「機能するチームについて理論的に解説されています。そのアプローチは、組織でチームビルディングをする際に、チームの段階別に活用することができます」

2:「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」

著者 ジェフ・サザーランド 訳:石垣賀子
出版社 早川書房
安西さん「ソフトウェア開発でおこなわれている手法『スクラム』を解説しています。スクラムは、プログラミングなどのソフトウェア開発技術を含んでおらず、主にチームが目標に向かうための『型』を定義しているため、ソフトウェア開発以外でも効果を得ることができます」

3:「Wabi-Sabi わびさびを読み解く for Artists, Designers, Poets & Philosophers」

著者 レナード・コーレン 訳:内藤ゆき子
出版社 ビー・エヌ・エヌ新社
安西さん「日本人にとって、わびさびは説明することが難しいですが、アメリカ人であるレナード・コーエンが言語化をしています。『万物は、無常である』『万物は、不完全である』『万物は、未完成である』など、ありのままに受け入れようという日本人のベースとなっている考え方が、わかりやすく表現されています」

知識を得ることが前提として必要になる

これら3冊の本は、組織運営の上でどのように役立っていると思いますか?

安西さん「チームビルディングは、教科書通り行えばできるものではありません。考え方や哲学があった上で、チームメンバーの性格や特性に合わせた理論的なアプローチと、最終的にはチームメンバーがその理論を超えて変化をしていく必要があります。そのような要素が網羅されている内容を知識として得た上で、言語化されている解説をメンバーへ説明することで役立てています」

基盤となるのは考え方や哲学。その上で、人と人との臨機応変なコミュニケーションや変化が不可欠なのですね。

安西さん「主役は社員やチームメンバーであり、個々がパフォーマンスを発揮できる『環境』を創ることが最も重要なことです。『環境』とは、大きく分けて次のような3つが考えられます。
   
『チームが正しいと思うことができること』:マネージャーは組織の事情を優先したくなりますが、実際に動くのはチームであり、事情ではなく現場に答えがあります。チームが明確な目標をもち、やるべきことをすれば成果となります。
  
『常に変化をしていること』:答えがなく目標に向かうことは不可能です。小さな成功体験を元に次の方法を模索する必要があり、その習慣がチームに備わると、環境の変化にも素早く対応することができます。
   
『人が成長していること』:人は自分で考え実行でき、結果をフィードバックできる環境があれば成長できます。人の成長こそが組織の成長、成果を出すための絶対条件です」

グリー株式会社 山本千晴さん

スマホで遊べるゲームの提供・運営を中心に、さまざまなサービスを発信するグリー。山本千晴さん(以下、山本さん)は管理統括本部の人事本部 基幹制度チームでマネージャーをつとめられています。「リーダー」として動くとき、読んでおきたい本を次のように教えてくれました。

1:「なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践」

著者 ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー 訳:池村千秋
出版社 英治出版
山本さん「本書は、大人の知性は年齢とともに向上しうるという前提で、人材が絶え間なく成長していくようにするためには、リーダーの姿勢と組織の文化が発達志向である必要があるとしています。そのとき重要なのは、『大人になっても成長できるという前提』、『誰にもある成長欲求の育み』、『変革には時間がかかるという覚悟』、『感情が重要な役割を担っているという認識』などの要素。なかでも『試練は安全な場とセットで用意する』というのは、IT業界において疎かになりがちなところではないかと感じながら読みました」

著者は発達心理学と教育学の権威。研究結果に裏打ちされた内容ということで、確かな説得力を持った本と言えそうですね。

山本さん「『30を過ぎたら自己が確立してしまっていて可塑性がなくなる』とか『そこから成長することは困難』という評価を耳にすることがありますよね。でもわたし自身、企業での社会人経験をスタートしたのが30代だったこともあり、『そんなことない!』という反論をしたいのに、うまく言葉にできないでいました。
  
発達心理学を礎にするこの本では、『一定の条件が整えば、大人の知性はずっと発達することができる』というのが通奏低音となっていて、その一定の条件を組織および自身を含んだ個人に対して整えるにはどうしたらいいのか、というのが非常に実践的に説かれています。チーム・メンバーの成長は、いかにその阻害要因を認識し変容させられるかというリーダーのひとつの責任だ、ということに共感します」

2:「キングダム」

著者 原 泰久
出版社 集英社
山本さん「紀元前、中国の春秋戦国時代を舞台に、ふたりの主人公が中華統一を目指してともに成長していく史実に基づくマンガです。若くして王位に就いた少年『政』は、渦巻く政略の中で、確固としたヴィジョンを覚悟をもって示すことで、民を率いる真の王としてのカリスマ性を発揮していきます。一方、大将軍になることを目指し剣の腕を上げていく少年『信』は、次第にただ己が強いだけでは戦いを制することができないと気づき、現場で”隊”として成果を上げていくことを学んでいきます。国をひとつの会社に置き換えて読むとぐっと来ます」

テレビで紹介されたこともあり、現在人気爆発中のマンガです。武将のふるまいや言動など、リーダーとしての心構えが学べそうですね。

山本さん「課題の解決を急ぐと、つい独善的に進んでしまう傾向を自覚しているので、『いかに個々人の特性をいかしてチームの力を最大化するか』、『組織のなかで最善の成果を出すためにチームの役割をどう捉えるか』ということを改めて意識しました。そしてその意識は、リーダーなのか否かに関わらず、組織におけるチームのメンバー全員がもつべき意識だと思っています」

目指す形を共有し、当事者意識を持たせる

自分の経験や考えに絡めて、おすすめの本とそこから受けた影響を語ってくださった山本さん。ふだん業務を進める上で、どのようなことを重視されているのでしょうか。

山本さん「チームとして実現したいこと・大切にしたいことを、業務やディスカッションを通じてチームで共有することが大事だと思っています。その上で、どんな小さい業務であれ全体像における背景と意義があるので、それを各人が認識して責任を持てるよう、必要な情報は取りに行って展開し、信じて任せて欲しいし、任せます。そうして当事者意識をもったメンバーの集合体は、各々の業務についても意見をぶつけ合いながら、互いを認めて結束がありつつ、有機的に多様な動きが出来る強いチームになると考えています」

GMOインターネット株式会社 片野道雄さん

「すべての人にインターネット」という言葉を掲げ、インターネットのサービスを総合的に提供しているGMOインターネットグループ。回答していただいたのは、GMOインターネット株式会社 次世代システム研究室でプロジェクトマネージャーとしてグループのサービスを支える、データベースエンジニアでもある片野道雄さん(以下、片野さん)です。

1:「高校サッカーは頭脳が9割」

著者 篠幸彦
出版社 東邦出版
片野さん「サッカー観戦が趣味なのですが、サッカーは監督の手腕がとても大きいと感じており、気になって読みました。強豪私立でない高校を全国大会に連れていった4人のサッカー部監督の教員のお話で、得るものがたくさんありました。
  
共通していたのは、サッカーだけでなく人としての成長が大事であるということ、褒め方・叱り方などの伝え方が大事であるということ。『努力する才能』を伸ばすことが努力という話と、敢えて臨機応変をさせないで一人ひとりのできるところを徹底的に伸ばして戦うという話が、特に印象に残りました」

同じチームでも、監督が変わると勝ちが続くようになったりしますよね。片野さんにとって、この本のどのような点がチームの運営に役立っていると感じているのでしょうか。

片野さん「よく観察し一人ひとりの褒め方・叱り方などといった伝え方を変える、ということは自分自身まだまだできていないので、改めて大事なことだと思いました。最初から十分な戦力とは言えなくても、チームで戦えば勝てる、トレーニングでやり方を身につけられる、といったところはどこでも通用する内容です。一人ひとりのできるところを徹底的に伸ばして戦う話も、メンバーそれぞれの強みを活かしたい私が所属するチームの方針にも繋がる部分ですので、参考になりました」

2:「エッセンシャル スクラム: アジャイル開発に関わるすべての人のための完全攻略ガイド」

著者 ルービン・ケネス 訳:岡澤裕二、角征典、高木正弘、和智右桂
出版社 翔泳社
片野さん「組織論の本ではないですが、アジャイル開発のスクラムの実践的な取り組みについてわかりやすくまとめられた本です。スクラムは『スクラムガイド』にとてもシンプルに書かれているものの、実践するのは簡単ではありません。この本には実践の例がよく書かれているので、スクラムベースのシステム開発をする上で参考書として役立ちました」

「エッセンシャルスクラム」の考えも、ふだんのチーム運営に大きく貢献しているようです。

片野さん「何をどう作るかを人任せにしないでみんなで考えて、1周間か2周間ほどの開発サイクルを回し続けるスクラム開発は、考えないで作業だけをお願いすることを良しとしません。この本を参考に実践したスクラムベースの開発で、メンバーの意識もモチベーションも上がったと思います」

積極的にチャレンジできるチームづくりを意識

最後に、片野さんがチームの運営に関して大切にされていることを伺いました。

片野さん「可能な限り、メンバーがチャレンジできるプロジェクトになるように意識しています。私達のシステム開発は無償で公開されているオープンソースソフトウェア(OSS)をよく利用します。インターネット関連のOSSは技術革新がとても速く、競争力を保つためにも技術的なチャレンジが不可欠です。困難も伴いますが、エンジニアのやりがいに繋がりますので、大事なことです。
  
また、仕様設計など『何をどう作るか』と考えるところも、特定のメンバーだけではなく、なるべく一人ひとりにそうした役割と責任が行き渡るように心がけています。最初はできなくてもチャレンジしてもらうことで、大変ですが理解が深まります。そして任せられる仕事の領域が増え、やりがいに繋がると考えています」

GMOペパボ株式会社 栗林健太郎さん

市役所職員、株式会社はてなを経て、GMOペパボ株式会社執行役員CTOに就かれた栗林健太郎さん(以下、栗林さん)。Perl Monger兼本読みとして、フロントエンドからインフラ、ハッカー倫理から経営まで幅広く活躍されている、「文化系ソフトウェアエンジニア」です。ネットでは「あんちぽくん」の名でも知られる栗林さんにもお話をうかがいました。

栗林さん「『悩む』よりも『考える』ことの方が課題解決のためになると思い、3冊の本をおすすめします」

1:「組織論 補訂版」

著者 桑田耕太郎、田尾雅夫
出版社 有斐閣
栗林さん「組織論はマクロ・ミクロともに、この本でひと通りの全体像を得られます。エンジニアとして技術的課題に取り組むとき、全体像を様々な側面(技術要素、アーキテクチャ、開発プロセスなど)から把握するように、マネジャーとして組織課題に取り組む場合も同様に多角的に把握したいと考えています。『組織論』はその需要に応えてくれました」

2:「技術経営論」

著者 丹羽清
出版社 東京大学出版会
栗林さん「CTOによる技術経営についての教科書です。技術経営の本はたくさんありますが、『CTOによる』という意味では、日本語で読める本はこの本ぐらいでしょう。CTOというのは、組織マネジメントを行う一方で、技術リーダーという役割もありますので、どのようなふるまいが望ましいかを知るのに『技術経営論』を読みました。今後の技術動向を読み、意思決定を行い、新しい価値を生み出すべく取り組んでいるところです」

3:「【増補版】製品開発力―自動車産業の『組織能力』と『競争力』の研究」

著者 藤本隆宏、キム B.クラーク 訳:田村明比古
出版社 ダイヤモンド社
栗林さん「1980年代の自動車業界において、高業績企業にはどのようなパターンが見られたのかを論じた本で、業界や時代は違えども、学べることがたくさんあります。いまのWeb業界は、コンセプトをユーザ体験へ一気貫徹させることに成功した企業が高業績を誇った、かつての自動車業界に似ています。『製品開発力』を読むことにより、その思いは確信に変わりました。未来を過去の経験から先取りし、高いユーザ価値を作り出したいと考えます」

3冊の本と、その内容を日々にどう生かしているかを教えていただきました。エンジニア、そしてCTOならではの視点が感じられますね。

教科書通りにやるのは、場当たり的に取り組むのとは違う

そんな栗林さん、お仕事の場面では、どのようなことを大切にされているのでしょうか。

栗林さん「まずは教科書通りにやる、ということを大切にしています。会社というひとつの組織の中でも、事業部やチームといったそれぞれのサブ組織によって、人員構成・目標生成の方法・マネジャーのタイプなどにより、大きな差異が存在します。同じ会社だからといって同じようにマネジメントできるわけではありません。
  
しかし、場当たり的にことにあたるのではなく、教科書に学び幅広い知見を得ることで、それぞれの差異を吸収することが望ましいと考えています。組織のミッションを定義し、ビジョンを共有し、組織づくりをし、メンバーのモチベーションを調整すること。また、変化に柔軟に対応し長期的な成長を可能にする組織能力を構築するために、技術的・人的基盤を整えていくこともまた、教科書通りの実践だと言えるでしょう」

Tokyo Otaku Mode Inc. 吉見晋平さん

吉見晋平さん(以下、吉見さん)は楽天株式会社パッケージメディア事業部にて音楽・映像コンテンツに関するB2Cのバイイング業務に従事されていました。商品戦略やサプライチェーン戦略を担当し、シンガポールにて海外ECの立ち上げへ。2014年に日本のポップカルチャーを世界に発信し、販売するTokyo Otaku Mode Inc.へ入社され、EC事業部のMDマネージャーとして日本の商品を海外へ届けていらっしゃいます。

1:「行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論」

著者 舞田竜宣、杉山尚子
出版社 日本経済新聞出版社
吉見さん「『人のやる気を変えるのは難しいが、人の行動を変えることはできる』という観点から、科学的にアプローチを捉えた本です。精神論ややる気などではなく、人の行動自体を捉えることで問題解決や改善点を導き出すというアプローチは、非常に勉強になります」

2:「マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則 」

著者 ピーター・F・ドラッカー 訳:上田 惇生
出版社 ダイヤモンド社
吉見さん「言わずと知れたドラッカーの名著です。古典ではありますが、エッセンスの部分は何も色あせていないと感じます。企業とは何か?マネジメントとは何か?という問いに対して非常に参考になります」

管理するより主体性を重んじるマネジメントを目指す

偶然にも、どちらのタイトルにも「マネジメント」の文字が。そこにはスタートアップでチームを運営することの重要さが隠れていました。

吉見さん「当社のようなスタートアップ企業は、限られた経営資源(できないことだらけ)の中でいかにやるべきことを見つけ出し注力できるか?という点が非常に大事です。ですので、働いているメンバーのパフォーマンスをいかに最大限引き出せるかという視点を大事にしています。紹介した本は、その点で多くの示唆をもらえます。メンバーのパフォーマンスを最大限引き出すマネジメントは、大企業でも重要なことなので、多くの人に役立つ本だと思います」

では、吉見さんはふだんマネジメントを考える際、どのようなことを最も大切にしているのでしょうか?

吉見さん「大切にしているのは『主体的に自走できるか?』ということ。マイクロマネジメントで数字を管理していくのも、状況によっては大事ですが、自ら考えて自ら行動するチームでありたい。そのためには役割と権限をしっかり定義することが重要です。責任と権限が明確であれば、自ら考えて自ら行動していくという土壌が生まれてきます。仕事の責任が大きければ大きいほど、人は成長します。主体的にやりたいと思えることを徹底的にサポートして行けるようなチーム作りは意識してますね」

株式会社はてな 松田光憲さん

2001年の創業以来、「はてなブログ」「はてなブックマーク」をはじめとする多種多様なサービスを提供し続ける株式会社はてな。コーポレート本部にて人事・総務部長をつとめられている松田光憲さん(以下、松田さん)はどのような本をおすすめしてくれるのでしょうか。

1:「企業変革力」

著者 ジョン・P.コッター 訳:梅津祐良
出版社 日経BP社
松田さん「変革を成功に導くために必要な8段階のステップをまとめた本です。なぜ変革は失敗するのか、また、変革が成功するためのメカニズムとその後いかにして定着させるかについて、実践的・実用的に研究されています。印象に残っている内容は、ビジョンの重要性です。真の変革の実現には、すぐれたビジョンが必要であり、また、変革推進者が言行一致させることがビジョンの浸透には不可欠であると述べられています」

2:「上司と部下のためのソーシャルスキル」

著者 相川充、田中健吾
出版社 サイエンス社
松田さん「心理学の権威である著者が、職場の人間関係を良くするためのスキルについてまとめた本です。ソーシャルスキルは『能力』ではなく『技術』と捉え、繰り返し試すことで人間関係のスキルが向上すると記されています。相手の思いを受け入れるための『聴くスキル』は、仕事面だけではなく、家庭内のコミュニケーションにおいても有益です」

目標を明確にしたら、あとは信じて任せよう

「企業変革」と「上司と部下」。一見、相反するようなスケールのタイトルですが、これらの内容はどのように役立てていらっしゃるのでしょうか?

松田さん「『企業変革力』は、改善すべき課題に対してプロジェクトチームを組成する場合に参考にしています。逆に『上司と部下のためのソーシャルスキル』は、日々の業務においてコミュニケーションが発生するあらゆる場面で活用できます。組織運営では、大きな変化が必要なときもあれば、安定的に運用することが求められることもありますので、両者の視点で役に立つ2冊です」

最後に、組織運営について大切にしていることを聞いてみました。

松田さん「メンバーを信頼することです。当社には優秀なメンバーが集まっていますので、細かいことをあれこれ指示するのではなく、ゴールとなる目標設定を明確にすることに注力しています。ゴールに対して責任を持つのは上司の仕事ですが、プロセスにおいては権限を大きく移譲することで、個々人の持つ能力が最大化します。よって、メンバーを信頼して任せるほうが大きな成果につながると考えています」

ピクスタ株式会社 古俣大介さん

古俣大介さん(以下、古俣さん)は大学在学中に、コーヒー豆のEC販売・古着販売を開始。その後、株式会社ガイアックスに入社、2つの新規事業部・子会社の立ち上げに参画、取締役に就任。有限会社万来設立、美容健康グッズのEC事業を経て、写真・動画・イラストなどの素材を販売するデジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」を運営するピクスタ株式会社の代表を務められており、2015年9月14日に東証マザーズに株式上場を果たしました。

1:「ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則」

著者 ジム・コリンズ 訳:山岡 洋一
出版社 日経BP社
古俣さん「この本自体は組織論というより経営論です。しかし、ところどころに『偉大な企業』になるための組織運営に関する金言が載っています。特に『誰をバスに乗せるか:最初に人を選び、その後に目標を選ぶ』というパートは、まさに組織づくりにおいて最も重要な点をあらわしています。そのパートの中の『その社員をまた雇いたいと思うか?』という質問は恐ろしいほど効果的です」

2:「採用基準」

著者 伊賀泰代
出版社 ダイヤモンド社
古俣さん「これはマッキンゼーの人事採用マネジャーを10年以上務めた方の本です。本の中で組織運営において最も重要なのは『リーダーシップはすべての人に求められる』という部分です。全員が組織の成果をあげるために必要なことを実行する、組織の和より成果を優先するなど、言い換えると全体最適、経営者視点を持っている=良い人材であるという部分がとても参考になります」

貴重な発言がヒエラルキーにつぶされないよう尽力する

ここで、それぞれの本の考え方がお仕事にどう影響しているのかも聞いてみました。

古俣さん「『ビジョナリー・カンパニー2』は採用の選考基準、具体的には会社の文化・価値観にフィットするかという点を最も重視する、という現在の考え方につながっています。現メンバーにどう成長してもらうか、どういう人材を引き上げていくかという方針には、『採用基準』のリーダーシップの考え方を取り入れています。
  
これまで組織が大きくなっていく過程で、採用した人材がフィットしない、リーダーポジションに引き上げる際の選定基準があやふや、という問題がありましたが、この2冊の本から多くの示唆を得て最適化をはかることができました」

とした上で、最後に「まだまだ改善途上ですがね」と答えてくれた古俣さん。会社という大きなチームを率いる上で、こんなことを大切にされているそうです。

古俣さん「『インターネットでフラットな世界をつくる』という企業理念にも通じるのですが、私たちピクスタはフラットな企業文化を志向しています。その理由は私たちはインターネットのプラットフォーム事業を行っており、ユーザーに近い各メンバーが常にユーザーと向き合いながら、自律的に判断して施策を実行していく必要があるためです。『誰が言うかより何を言うか』『推測ではなく計測』といった考え方を重視し、誰かの発言にヒエラルキーが影響されない空気をつくる努力をしています」

株式会社ミクシィ 水本敦則さん

一大ムーブメントを巻き起こしたSNS「mixi」や、ひっぱりハンティングRPG「モンスターストライク」、子どもの写真や動画を家族だけに共有できるサービス「家族アルバム みてね」などで有名な株式会社ミクシィ。人事部に所属する水本敦則さん(以下、水本さん)のおすすめの本は2冊です。

1:「ザ・ファシリテーター」

著者 森 時彦
出版社 ダイヤモンド社
「『ファシリテーション』をキーワードにして、MBAのスクールなどでやるような、企業改革のケーススタディを物語にした一冊です。特定の課題に対して主人公が『ファシリテーション』を用いて解決をしていく内容になっているので、どんなときに・どんな風に『ファシリテーション』が使えるのか、大体わかる本です」

水本さんは次のような場面で、この本の内容を参考にしているそうです。

「『チーム組成時に発生するメンバーの目的意識を合わせる場面』と、『チーム内または、チーム間でのコンフリクトに対処する場面』。この二つが良いチームを作るきっかけになる非常に重要なタイミングだと思います。その際に行うMTGの場作りは難しく、中々うまくいかないこともあります。そんなときの解決方法がそのまま書かれているので、ちょっとまねして工夫するだけで物事が上手くいきます」

2:「ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える」

著者 ラズロ・ボック 訳:鬼澤忍、矢羽野薫
出版社 東洋経済新報社
「Googleの人事のことが一冊にまとめられた本です。著者が創業期ではなく拡大期にジョインしているため、企業が拡大するうえでどのようなことが起きるか、その状況に対してどう考えていくか、創業時の考えをどのようにつなげていくか、ということが読むとよくわかります」

検索エンジンをはじめとした、さまざまなサービスを手掛けるGoogle。組織が拡大していくときのケーススタディとして役立ちそうですね。

「『組織として何を大事にするか?』『こういうことが大事だからこんなことをやった』『結果こうなったから、今はこんな風にしている』ということが書かれています。どんな会社にもあてはまる事例ではありませんが、考え方の参考にするという意味で非常にためになります」

能力やスキルだけではチームはうまくいかない

おすすめしていただいたのは、どちらもケーススタディや実際の会社のエピソードなど、実践的かつ具体的な本。その内容を受けて、水本さんがいつも心がけていることも聞いてみました。

チームのメンバーがお互いを尊重して、助け合える関係を作ることを大切にしています。能力やスキルで人を集めても信頼関係や安心感がないとチームは機能しないし、さらには所属する個々人が成長しない。一方で『信頼関係や安心感があるとチームも個人も成長する』ということを何度か目の当たりにしたので、大切にしようと決めていますね」

株式会社リブセンス 細井広太郎さん

アルバイト求人サイトの「ジョブセンス」などを運営する株式会社リブセンス。アルバイト事業部の部長を務められている細井広太郎さん(以下、細井さん)にお話をうかがいました。

1:「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」

著者 マーカス・バッキンガム、ドナルド・O.クリフトン 訳:田口俊樹
出版社 日本経済新聞出版社
細井さん「個人の持っている強み・特長が『ストレングスファインダー』というテストと解説によって明確になります。この本とは前職(研修の会社)の時に出会い、サービスとして扱っていました。
  
一見、個々人に関する本のように思えますが、チーム・組織は個人の集まり。個人同士の成果を足し算としてではなく、掛け算のように上げていくには、相互の強みを理解し合った上で、それを上手く活かしていくことが必要不可欠です。もし、誰かと反りが合わないように感じても、その人との違いを嫌がるのではなく、『自分にはない強み』と捉え直すことで、関係性を良化し、チームとして高い成果を上げられるようになると思います」

相手の苦手なところを強みだと思えるかどうかで、自分の人生にも大きく関わってきそうですね。この本のどんな点が、ふだん役立っているのでしょうか?

細井さん「個々の強みに関する解説も役立ちますが、『強みを活かす』というコンセプトに立ち返ることが組織運営には重要だと感じています。
  
リブセンスでは、多様なバックグラウンドを持った、異なる職種のメンバーが1つのチームで働くケースがよくあります。このため、各メンバーの苦手なことやできないことではなく強みに目を向け、それを活かせるようにアサインしたり、ポジティブなフィードバックをたくさんするように心がけたりしています。今後は、相互の強みをより理解できるようなワークショップも行っていきたいと考えています」

強みを活かして良いスパイラルをつくる

最後に、細井さんがふだんから大切にされていることを聞いてみました。

細井さん「『強みを活かす』ことを大切にしています。メンバーの強みを活かすと、仕事の成果が上がりやすくなります。その結果、各自のモチベーションが上がりやすくなり、メンバーも成長しやすくなる。そしてさらに高い成果を上げるという、良いスパイラルを生み出します。多様性を活かすチームを作るには、メンバーが自分の強みを認識することはもちろん、お互いの強みを理解し、尊重し合うことが大切だと考えています』

読書で道を切り拓こう

IT企業で、組織やチームを運営する立場の皆さんにお答えいただきました。色あせない名著や話題になった本まで、バリエーション豊かなラインナップが出そろいましたね。

仕事観やふだん心がけていることについても教えていただき、読んでいて思わず自分のチームを振り返った人もいたのではないでしょうか。

迷っているあなたは、気になった本のページを開いてみるべし。世界を変えるヒントに出会えたら、嬉しいですよね。

(image by ぱくたそ)

この記事で使われている画像一覧

  • 73787c96 8051 4175 b9f5 c23dc1e5b4fc thumbnail
  • E498931e 2791 4afd 965b 0b1d24a1304a thumbnail
  • 1e4052c8 5ea0 4bae a2d0 77a407d11e39 thumbnail
  • 4ccf14de 7dbe 484f 99e6 d01033b4907e thumbnail
  • 6ee5e1a1 7961 46bd 9b9f 098a768026ff thumbnail
  • 4ccf14de 7dbe 484f 99e6 d01033b4907e thumbnail
  • 494412e3 ec45 4119 9ea8 078b58a3a5bc thumbnail
  • 9a3ed359 69bc 4e81 9bf6 cdec5cf03d11 thumbnail
  • 03fa8016 2e9a 4ff7 b4e9 19b50891afe6 thumbnail
  • Ecdf1692 c7a6 4c17 af9d 979d4cf1258a thumbnail
  • 89759f88 bdd6 4865 bc47 d4b5ffea3206 thumbnail
  • 27422b1b c84d 4755 82ef e6e593c65ee4 thumbnail
  • 0c08593e c62f 4670 ac67 3e1e9d0c87b6 thumbnail
  • 04b682be 2eda 4d0c 8dbd c4e23a51ffc4 thumbnail
  • 6f2e1c75 f3c5 40fa 91d0 800afaf6edfd thumbnail
  • 3227a932 e3d7 4ff7 ac5a eb676754d109 thumbnail
  • 0d5f01d7 57c2 4ed7 951e 9c080027cb93 thumbnail
  • 1066acb8 0379 4ccc 9042 af8413900095 thumbnail
  • C98f5779 0cb7 449c a543 5c5d5a9d41e1 thumbnail
  • 9184aaab bf75 4654 ad44 96370b52703b thumbnail
  • 969dd4b5 f5b5 4995 be74 fcc39a83bcaa thumbnail
  • 947a67d7 b4d0 4f1f 87df 3db23b02406e thumbnail
  • 0c69a7c8 411b 4f64 a8d2 cd9f9d83105c thumbnail
  • 0a050475 e21e 4bb7 ac87 caa8d6ffe611 thumbnail
  • 232e4e42 6854 4ada 8003 0601e888a428 thumbnail
  • 490cff5e 7d4e 4ffc a696 9a8cf972edb2 thumbnail
  • 5fc2c26a 2847 4961 b3b2 7af3afcc5975 thumbnail
  • 9f2bd913 4bcf 459d b934 770f456c589b thumbnail
  • 259e2048 3c59 432d be56 5c515ae671aa thumbnail
  • 1f1ce228 66d9 44d2 babe 166892ba9c28 thumbnail
  • 8d17de13 b44d 412e 8f1f 2300b6e66573 thumbnail
  • 02a5b519 54a1 44cd b3e4 2cd91a0df790 thumbnail

本記事は、2015年09月29日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

編集部ピックアップ

編集部おすすめ期間限定のPRコンテンツ

もっと見る