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「ぶたじる」「とんじる」…あなたはどう読む?ちょっとマジメに考えてみた「豚汁」の読み方

2014年08月20日作成

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わかめと豆腐のおみそ汁、油揚げのおみそ汁、じゃがいものおみそ汁、大根のおみそ汁……まさに群雄割拠のおみそ汁界において、「具がたくさん入っててなんかちょっと豪華」という唯一無二のイメージをもってして輝きを放ち続けているのが「豚汁」です。

しかしそんな豚汁も、長年に渡りあるひとつの問題を抱えているのです。それは豚汁という名称が、「とんじる」なのか「ぶたじる」なのか?ということ。

きのことたけのこのように、長年に渡りとんじる派とぶたじる派との間で争われてきたこのトピックスについて考えてみました!

目次

豚汁とは

豚汁とはおみそ汁の一種であり、使用する具材が多いこと、その具材のひとつとして豚肉を入れることが大きな特徴とされています。また栄養価が高いため副菜としてだけでなく主菜にもなりうる料理で、全国的に広く人気のあるおみそ汁のひとつです。ちなみに、各家庭や地域によって使用具材が異なり、地方色が強い料理でもあります。

また豚汁は豚肉から出る油がスープ表面を覆うため冷めにくいことから、寒冷地や寒い時期に食べられることが多いですが、最近は年間を通して日本料理店や牛丼店で提供されています。そんな人気料理の豚汁ですが、あることについて昔から議論がなされているのです。

それは、「豚汁」の読み方について。長く続いてきた「とんじる派」と「ぶたじる派」の間には、おそらくたった今この瞬間にもアツい議論が交わされていること間違いありません!

連綿と続くぶたじるvsとんじる論争

先達の調査から浮き彫りになる事実

これまでにも、「とんじる」派と「ぶたじる」派、そしてその伝播や広がりを調べる運動がさまざまなメディア・Webサイトでなされてきています。それらの結果をまとめてみると、このような結果が出ています。

  • 「とんじる」派が7割、「ぶたじる」派が3割(ソース
  • 北海道と九州北中部、近畿に「ぶたじる」文化圏(ソース12
  • 「ぶたじる」は昔の呼び名かも(ソース

また、豚汁を提供するレストラン(『すき家』『吉野家』『なか卯』『松屋』)でも「とんじる」と呼ばれているようです。

「ぶたじる」という呼び名は主に北海道・九州北中部そして近畿地方の「ぶたじる文化圏」で使われているようですが、逆にそのほかの地域では圧倒的に「とんじる」派が多いことがわかります。北端と南端、そしてぽつりと中部にある「ぶたじる」文化…なぜこのような分布が生まれたのでしょうか?

「ぶた」と「とん」から考える

訓読みである「ぶた」と音読みである「とん」。前述の「ぶたじる文化圏」とその他の地方の間には、他の料理においてもこのぶた・とん間のカルチャーギャップは生まれているのでしょうか?

「豚カツ」

まず「豚カツ」について考えてみましょう。これは「とんかつ」読みがほぼ10割を占めるのではないでしょうか。なかには「ぶたかつ」と呼ばれる方もいるかもしませんが、豚汁のように読み方の分布調査がなされるほど「ぶたかつ派」の声は多くないことからも「とんかつ」呼びが圧倒的に優勢と考えて良いでしょう。

そんな「豚カツ」の起源には諸説あるようですが、モデルとなったのは洋食メニューの「ポークカツ」だそうです。昭和7年にはすでに東京各地でとんかつ屋が営業し、大衆に認知されていたことから、「豚カツ」という料理と料理名は東京で生まれ、全国に広がっていったと考えられます。

「豚丼」

次いで「豚丼」。北海道帯広市の名物とされていますが、こちらの調査によれば「とんどん」呼びは4%、残り96%は「ぶたどん」呼びです。

「豚丼」の呼び名については、家庭料理としての周知、北海道・帯広市の郷土料理としての周知、そして牛丼チェーンで提供される料理としての周知の3つが関係しているようです。ちなみに牛丼チェーンでの商品名はそれぞれ

  • 松屋「豚めし(ぶためし)」
  • 吉野家「豚丼(ぶたどん)」
  • すき家「豚丼(とんどん)」
  • なか卯「豚どんぶり(ぶたどんぶり)」 となっています。

上記に挙げた牛丼チェーンのうち全ての店で豚汁を「とんじる」と読むのに対し、「豚丼」については表記ブレが見られますね。そもそも牛丼屋の豚丼は2003年末にBSE問題で米国産牛肉が輸入できなくなった際、安い同国産牛を使っていた牛丼チェーンが採算を採るために苦肉の「代用丼」として生み出されたものであり、呼び名の差異はこうした性格から生まれているものと考えられます。

しかし、このような表記ブレがあっても豚丼は96%の方に「ぶたどん」と呼ばれてます。これは家庭料理としての「ぶたどん」の土壌が、ローカルフードの流行により帯広市の郷土料理としての「ぶたどん」呼びが広まったことでさらに強固に定着したものなのではないでしょうか。

「豚串」

そして最後に「豚串」です。関東ほかで広く「やきとん」と呼ばれ親しまれている串物料理ですね。しかし、北海道ではたとえ串に刺さっているのが豚肉であっても「焼き鳥」と呼び、九州では「ぶたくし」「ぶたバラ」と呼ぶうえ「やきとん」という言葉が存在しないんだとか。

興味深いことに、呼び名こそ違えどここでも「ぶたじる文化圏」は共通性を見せていますね。ちなみに「やきとん」は豚肉を串にさしたものと豚のモツを串にさしたもののの両方を指すことばだそうですが、ここでは豚肉を串にさした料理として考えることにします。

そもそも焼きとりや豚串のような串物文化は、北海道室蘭市や福岡県久留米市、愛媛県の今治市に愛知県名古屋市、東京の浅草など非常に多くの場所においてそれぞれ独自に発達していったものです。そのため、呼び方もまた地域により差が出たように思います。

料理の発祥地が関係している?

「豚カツ」「豚丼」ではぶた・とんの地域差が生まれなかったにもかかわらず、「豚串」ではまたその差異が現れています。その差は料理・料理名の発祥地が関係しているのではないでしょうか。

「豚カツ」は首都圏で発祥した料理で、「とんかつ」という呼び名で全国に広まっていき定着したもの。「豚丼」は家庭料理から帯広市の郷土料理として「ぶたどん」の読み方が全国に広まっていき定着したものです。

対して「豚串」は全国の各地域で発生・発達したものであるため、各地でさまざまな呼び名が生まれていき、それがそれぞれの地域で定着していったため、こうした呼び名のブレが生じたのではないでしょうか。

要するに、ひとところで発祥・発達した料理とその料理名がそこを始点に広まっていった場合は呼び名が統一される確率が高く、また逆にさまざまな地域でそれぞれ同じように発祥・発達しながら広まっていった料理とその料理名は、呼び名の統一される確率が低くなるのかもしれないということです。

それに当てはめると、「豚汁」という料理は後者のようにして全国区のお味噌汁になったものと考えられます。実際、豚汁はその起源や発祥がはっきりしていません。

一説によれば鹿児島県のさつま汁が原型と言われることや、また猪汁が原型であるとされることもあります。しかし一方では明治の食肉解禁以降において、豚肉文化は関西よりも関東でより早く広まったとされ、豚汁は関東で発達したものとされていたり、また豚肉から出る脂がスープの表面を覆い冷めにくいため、寒い地域で発達したものと言われることもあります。

このようにさまざまな地域でさまざまに親しまれて広まっていったからこそ、「とんじる」「ぶたじる」という呼び名の差が生じたのかもしれません。

北海道と九州は「豚丼」「豚串」のように、「豚」を「とん」ではなく「ぶた」と読むことが多いというのも、北端と南端の共通性の一因となっているようですね。

とはいえ「豚骨」は「『とん』こつ」なんですよね…。

方言周圏論から考える

北海道と九州の共通性について考えるにあたり、すこし視点を変えて「方言周圏論」をもってして見てみたいと思います。民俗学者である柳田国男は、「蝸牛考」という著書の中で「方言周圏論」という説を提唱しました。これは方言や言葉は京都のような文化的中心地から生まれ、そしてそれが文化的中心地から同心円状に分布する場合、外側にあるより古い形から内側にあるより新しい形へ順次変化したと推定するものです。

つまり強引に言ってしまうと、文化的中心地から近ければ近いほどそこにある方言や言葉は新しいものになっているということ、また中心地から離れた地域には、かつて文化的中心地で使われていた古い言葉が同心円状を描くように残っていく…ということです。

実際はそこまで美しい同心円を描かずに、他地域との交流の深さ・多さや、山間部で言葉の変化に取り残される例などもみられるのですが、おおむね同心円を描くとされています。

「豚汁」にも当てはまるかもしれない

「ぶたじる」「とんじる」の違いにももしかしたらこの説があてはまる可能性があるかもしれません。

「ぶたじる文化圏」は主に北海道と九州北中部、そして近畿地方の一部です。また上述の調査ページや、Q&Aアプリ「アンサー」で集められた「ぶたじる・とんじる」に関する回答のなかに「自分や親は『とんじる』と呼ぶが、祖母・祖父世代は『ぶたじる』と呼ぶ」というものがありました。

ここから、「もとは『ぶたじる』という呼び名だったが、やがて新しい呼び名である『とんじる』が生まれそれが広まっていったが、北端・南端である北海道と九州にはもともとの『ぶたじる』呼びが残った」という仮説を立てることができます。これにより、「ぶたじる」呼びの祖父母世代たちに関する疑問を解くことができるのです。

「とんじる」という呼び名がが生まれる前、「ぶたじる」という呼び名が文化的中心地において現役であったころの祖父母たちは、とうぜん「豚汁」を「ぶたじる」と呼んでいたはずです。そしてそこで一度「ぶたじる」として記憶したものを、新たに生まれた「とんじる」という呼び名へと訂正することなく、現在までそのまま「ぶたじる」呼びを使用しているものと考えられます。

一般的に使うかは別として、「ぶたじる」「とんじる」のどちらの呼び方でも意味が通じることもまたその一助を担っているのではないでしょうか。

京都を中心とする近畿地方で残っているのは、「豚汁」が方言ではなく料理名であるためかもしれません。方言であれば新しい言葉へと変化していきますが、歴史を重んじる京都の文化において、料理名のような固有名詞は易々と変わることのない場合が多いため、京都をはじめとする近畿地方では「ぶたじる」呼びが残っていったと考えます。

また、「逆に、音やアクセントはむしろ文化的中心地ほど保守的」という「方言孤立変遷論」という論とあわせてみても、近畿地方の一部に残る「ぶたじる」文化圏に納得がいくかもしれませんね。

しかし矛盾点もある

しかし、この仮説にはいくつか矛盾点も存在しています。

そもそも豚肉もとい肉食文化は明治時代に解禁されたため、それに付随する言葉もそこまで古いというわけではありません。今のようにテレビやネットのない時代において言葉の発生・伝播・定着にはそれなりに時間がかかるものであったことを考えると、50~100年ではっきりとした差がでるものなのかどうかは…微妙なところです。

とはいえ、北端(北海道)・中央(京都)・南端(九州北中部)という分散した地域にそれぞれ色濃く残る「ぶたじる」という読み方には、それらの地域への共通性やつながりを見出すことができそうですね。

結局どっちが正しいの?

「『とんじる』と『ぶたじる』、結局どっちが正しいの?」という疑問には「どっちでも通じるしおいしいからどっちでもいいじゃん!!」と返しておきましょう。

言葉は毎日のように変化し、そして新しいものが生まれていき、そしてだからこそ味があり、発見があります。耳慣れない言葉を聞いても頭ごなしに否定せずに興味をもって受け入れれば、豚汁もいつもよりもっとおいしく食べられるかもしれませんね!

(image by PresenPic)

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本記事は、2014年08月20日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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