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もし戦争になったら?民間人を守る「戦時国際法」とは

2014年04月07日作成

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なんとなく自然豊かで、平和なイメージがあるスイスですが、実はその背景には、永世中立国として自国民の自由と独立を守るための毅然とした国家意思と、他国からの侵略を防ぐための徹底的な対策や設備を整えている国でもあるのです。

スイスの有事のときの対応は、民間レベルにまで浸透しています。その一環として、冷戦時代、緊急時や有事に備えた「心構え」から「対処法」までが事細かに記されている『民間防衛』と呼ばれる本が、スイス政府から国民全員に配られました。

今回はその中から、「戦時国際法」について紹介します。

目次

戦時国際法とは?

戦争はとても悲惨な結果を招く行為ですが、そんな戦争にも決まり・秩序が定められています。それが戦時国際法です。

戦時国際法とは、戦争時における戦争の定義や武力行使に関する手続き・規制、非戦闘員の保護などを定めた法律のことです。

  • 開戦・終戦
  • 交戦者の資格
  • 捕虜の扱い
  • 外敵手段の制限
  • 死傷者の収容・保護

などを定めています。

この法律は侵略する側にもされる側にも適用されるもので、宣戦布告される前でも効力を発揮します。

現在では国際連合憲章で法的に戦争の存在自体が否定されているため、国際人道法とも呼ばれています。

具体的にどんなもの?

戦時国際法とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?『民間防衛』にはスイス国民が理解しやすいようにまとめられています。

民間人は敵をむやみに攻撃してはいけない

戦時国際法では、交戦者の資格や捕虜の扱いが明確に定められています。交戦者として戦える人の条件に、『民間防衛』では以下のように説明されています。

1.戦時国際法は、軍服を着用し、訓練され、かつ、上官の指揮下にある戦闘員のみに対して適用される。
2.民間人および民間防災組織に属するすべての者は、軍事作戦を行なってはならない。孤立した行動は何の役にも立たない。それは無用の報復を招くだけである。
3.軍隊または民間防災組織に編入されていない者で国の防衛に参加協力することを希望する者は、地区の司令官に申し出なければならない。彼は軍服あるいは少なくとも赤字に白十字の腕章を着けることになる。
(『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳・P218より)

このように、軍隊などの組織に属していない民間人がむやみに敵を攻撃することはできません。

恨みや怒りの感情に任せて勝手に個人で攻撃を仕掛けることは、自らの命を危険にさらすだけでなく、自国民に対する無用な報復や虐殺を招く行為につながります。たった少人数の誤った行動が、周りの無関係な人間まで巻き込んでしまうのです。

交戦者と認められない人間が戦闘行為を行ってしまうと、戦後に裁判で裁かれるおそれがあるので、むやみな攻撃は禁物です。

敵の捕虜と負傷者の扱いについて

戦時国際法には捕虜や負傷した敵兵についての扱いも規定されています。

4.住民は、捕虜に対して敵意を示す行為を決して行なってはならない。いかなる立場の下でも、負傷者および病人は、たとえ敵であっても助けねばならない。これに反して、スパイ、平服またはにせの軍服を着用した破壊工作者、裏切者は、摘発され、軍法会議に引き渡される。彼らは、戦時国際法に従って軍事法廷で裁かれるであろう。(同上・P218~219より)

たとえ敵兵であっても、ケガを負っていたり捕虜としてとらえられている場合は、非人道的な行為に及ぶことは禁止されているのです。

個人による軍事的行動は慎む

個人で軍事的な行動を起こすことも禁止されています。

5.軍事施設、橋、道路、鉄道路線の破壊、産業施設を使用不能にすること、食糧の備蓄を中断すること、これらは、すべて軍命令によってのみ行なうことができる。自分の判断でこのような行為を行ない、あるいは行なおうとすることは、非合法な行為である。(同上・P219より)

軍の命令なしに、勝手に施設を破壊したりすることは違法です。

正当防衛の権利を有する

『民間防衛』の戦時国際法の記述の中で、最も強く言われているのが「正当防衛」についてです。

6.すべてのスイス人は、男も女も、軍に属しているといなとを問わず、その身体、生命、名誉が危険にさらされるときは、正当防衛の権利を有する。何人もこの権利を侵すことはできない。(同上・P219より)

これは、スイスの「自国の自由と独立を守る」という信念を守るための、もっとも大切な部分として扱われています。

なぜ戦時国際法を守る必要があるのか?

敵の侵略に屈しないため

戦時法規はあくまで決まりにすぎません。

仮に自国が占領地になった場合、敵があらゆる方法を用いて抵抗運動を抑圧しようとするでしょう。恐怖政治、食料供給の停止、住民の虐殺などの戦時法規を破るような行動に出る可能性も高いのです。

そのような状況で、自らの身を守るための権利が、前述の「正当防衛」の権利なのです。

スイスのすべての男子も女子も、もし、敵が不当な手段で、その身体、生命または名誉を脅かすような場合は、あらゆる方法で正当防衛を行なう権利を有する。この権利は誰れも否定できない。(同上・P277より)

「自国民の自由と独立を守る」という信念を貫くために、『民間防衛』では戦争法規を遵守し、相手が武力を用いるような口実を与えないようにすることの大切さを説いているのです。

すべては自国を敵から守るために

自分の国と、自分たちの身を守るために、国民はどのようにするべきでしょうか?以下は占領下での民間人と抵抗運動の在り方です。

占領地帯では、住民は、国際法に基づいて最低限の保護だけは与えられる。
一方、抵抗運動は、戦時法規の規定に基づく恩恵に浴するために、その諸規定を遵守しなければならない。単なる殺人は禁止されている。

散発的な行為や、効果的でない行為は、かえって有害である。
抵抗運動は、責任者によって組織され、指揮されるものでなくてはならない。(同上・P276より)

原則として、占領に抵抗する戦闘は、正規の軍隊によって行われることが望ましいのです。軍隊としての規律を身につけ、よく統率されたグループによる行動なら、それが少数でも大軍に対抗することができるからです。

戦闘参加に不適格な大部分の一般国民は、占領軍に対して厳然たる態度を示し、できるだけ接触しないようにすること。(同上・P277より)

民間人が適切に行動することで、自国を守るための抵抗運動で効果を上げることができます。義憤に駆られて個人的な行動をしてしまうのは、かえって自らを危機にさらすことにもなりえるのです。

戦時国際法を守れば安全というわけではない、でも・・・

戦時国際法を守れば絶対に安全である、という保障はありません。しかし、これを遵守し理性を保つことで、より自国を不利な状況に追い込むことを防いでくれる役割も果たします。

スイスが戦争に遭ったときに、もっとも大切にすることは「自国の自由と独立を守ること」です。その信念が固いからこそ、敵に占領されたときは徹底的に抵抗しようとします。そのために戦時法規を守ることを重んじているのです。

スイスのこのような在り方は、学ぶべきところが多いかもしれませんね。

さらに詳しい情報を知りたい方は、原書房より出版されている『民間防衛』をチェックしてみましょう。

参考資料:『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳

(image by PresenPic)

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本記事は、2014年04月07日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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