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日本は「価値ある」祖国といえるか?スイス政府に学ぶ祖国の定義

2014年04月07日作成

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永世中立国として有名で、のどかな印象もあるスイス。実は、他国からの侵略を徹底的に食い止めるための『民間防衛』という1冊の本が、スイス政府から国民全員に配られているのをご存知でしたか?

緊急時に備えた、心構えから対処法までが事細かに記された『民間防衛』の第一章には、スイス国民にとっての「祖国」とはなにか?を定義する章があります。

日本では今や死語とすら感じられる「祖国」という言葉。ここでは、スイスの「祖国」の定義と比べながら、日本が価値ある祖国であるかを考えてみましょう。

目次

「祖国」の定義

Wikipedia(ウィキペディア)には、祖国とは下記のように記されています。

  • あるエスニックな集団がそこに長い歴史的なかかわりと深い文化的関連性を持っている文化的、地理的な地域についていうもの
  • 国民的なアイデンティティと結びついた土地
  • その人がそこから由来している出身地でもある国
  • 人種的、文化的なアデンティティとして帰属感を持っている国

基本的に、出身国を「祖国」と言うものだとしていますが、民族的用語として自国のことを「祖国」と呼ぶパターンや、自身のアイデンティティとマッチングしている土地、つまり生まれ育った地を「祖国」とするのが一般的な定義のようです。

また、出身国ではなくても、思想が近い国を「祖国」と呼ぶこともあるようですね。では、スイス政府が定義する「祖国」とはどういったものなのでしょうか?

スイスのいう「祖国」とは

美しさへの感謝だけでは説得力がない?

わが国は美しいが、そうは言っても 、その山々や湖に基づく祖国愛を説いただけでは、もはやその説得力はなくなった。(『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳・P14より)

スイスでは、スイスならではの美しい国土=祖国、自然の美しさへの愛=祖国愛が基本。しかし、輸送方法やインターネットが発達し、それぞれの国の美しさに直に触れられる現代では、もはやその定義だけでは不十分だと冒頭で語られています。

国民を尊重する制度こそが「祖国」たる由縁

常識のあるスイス国民は、わが国の諸制度が、人間のつくるあら ゆるものと同様に、完全ではないが、安定しており、人間を尊重していることを、認めざるを得ない。(同上・P14より)

では、何をもって祖国の定義とするかというと「制度」です。スイスが国民の権利のために制定・実施している制度こそ、国民への愛であり、愛すべき「祖国」の姿だというのです。

国民のための制度=祖国の価値?

国民を守る制度があるかどうか

社会福祉の面では大きな進歩が見られる。貧しい人々、身体障害者、老人は、国家の援助を受け、この援助も常に改善されつつある。連邦制度は全国民を守っている。

民主主義は正常にその機能を発揮している。公けの義務は公平に分担されている。すべての人々は一般教育を受けられる。(同上・P14より)

スイスが祖国として価値がある理由の1つは、制度です。人は、正義・信頼・安全・自由を求めるもの。スイス政府は、完全とは言えなくとも、これらの人間的欲求に対する保障制度が安定していて、国民を尊重していると自負しています。

『民間防衛』という書籍自体が東西冷戦時代に発表されていることもあり、特に、上記のように「社会福祉」や「民主主義」が強調されていますね。

スイスは価値ある「祖国」

このように基本的権利がよく保障されている国が、他に数多く見られるだろうか。

わが祖国は、 わが国民が、 肉体的にも、知的にも、 道徳的にも、充分に愛情をそそぎ奉仕する価値がある。(同上・P14より)

『民間防衛』では、何人の安全も保障できない現代において、他国と比べてもこれほど権利が整い保障されている国は少なく、スイスが十分に愛情を注ぐ価値のある「祖国」であることを説いています。

スイスと比べて日本は価値ある「祖国」?

さて、スイスに比べて日本の「祖国」としての価値はどうなのでしょうか?問題は多く叫ばれていますが、社会福祉制度も民主主義も、ある程度機能を果たしていますよね。

国民性や制度の違い

例えば、スイスと日本を比べると、スイスには日本のように国民保険などの健康保険制度はありません。例えばスイスの歯科は、非常に高額と言われています。日本は国民皆保険制度のおかげで、医療機関を安く利用することができるのです。

一方、日本の年金精度については行き詰っている感が否めません。スイスは日本と比べると、充分な金額が支給され老後は安泰と言われています。高齢者になるほど、月々の支払い額が上がります。国民の老後への備えの意識も非常に高く、国家補償の安心感も高いと言えるでしょう。

さらに、スイスは日本のように老齢者の介護について手厚い制度がありません教会や地域のサポート体制が非常に整っていて、国民意識としてもサポートに積極的です。介護士の社会的評価や地位が高いのも特徴ですね。

しかし、病院でお世話になる場合は、非常に高額になる可能性もあります。スイスでは、自分で保険会社を選んで工夫するなどの備えが不可欠なのですね。

他にも、スイスの学校制度は、公立の学校は大学も含め学費がすべて無料であるなど、美しい自然に加えて住民の暮らしやすさ、民度の高さを支える制度が充実している国であることは間違いありません。

国民の義務は「生き生きと生きる」こと

『民間防衛』では、これらの社会保障制度に守られた個人の義務とは「生き生きと生きる」ことだと宣言されています。これは、単に自由意志を持って生きるということではなく、法律や政治、社会制度などの公のテーマにたいして意志を持ち、共同体の維持に積極的に参加していくという意味です。

賢明な異議申し立ては、必要な改善を促し、この改善によって共同体の安全平穏がはかられる。消極的逃避や組織的反抗は、有益な努力を無駄にし、妨害し、意味ないものとする。(同上・P17より)

民主主義と平和主義を標榜する「祖国」に対し、祖国を愛する国民としてその健全な維持・発展に参加する義務が、スイスの国民には定められているのです。

祖国を価値あるものにするのは、結局国民だということなのかもしれません。

おわりに

人間というものは、自分たちの幼い時代のことを深く心に刻みつけているものである。生まれたころに住んでいた場所は、その人にとっていつまでも価値を失わない。(同上・P14より)

しかしながら、『民間防衛』では国の価値がすべて「制度」であるとは言い切っていないのも事実です。制度や風土は判断材料にはなるかもしれませんが、私たちが幼い頃に育った場所、心に残った風景や気持ちは、いつまでたっても価値のあるものと言えるのでしょう。

あなたにとって、日本は価値ある「祖国」ですか?

さらに詳しい情報を知りたい方は、原書房より出版されている『民間防衛』をチェックしてみましょう。

参考資料:『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳・P14

(image by PresenPic)

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本記事は、2014年04月07日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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